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「もったいない」が判断を鈍らせてはいないか?

サンクコスト

サンクコストという言葉をご存知でしょうか。行動経済学や心理学の考え方なのですが、すでに支払ってしまってもう取り戻せないお金のことをいいます。

例えば、レストランで大盛りを注文してしまったけれど、途中でお腹がいっぱいになってしまった。そんな時に「料金は払ったから無理してでも全部食べなければ」と思ったことはありませんか。これがサンクコストの典型例です。

ビジネスにおいても「成功への可能性が低い事業にすでに1億円投資してしまったし、ここまで来たのだからもう少し続けてみようか」といった判断もサンクコストに該当します。

こうした思考に陥ってしまうとさらに損失を拡大させてしまい、「もったいない」という感情に支配されて、冷静で合理的な判断ができなくなってしまいます。これが非常に恐ろしいところです。

実は、私は最近プライベートでこの問題に直面しました。息子が大学4年で就職も決まっているのに、留年するかもしれない状況になったのです(現時点で留年するかは未確定ですがほぼ留年)。本人は正直なところ留年してまで勉強したいという気持ちがない様子なので、親としては悩むわけです。

「ここまで授業料を払ってきたのだし、何とか卒業させなければ」

という意見ももちろん理解できるのですが、それより大事なのは過去の投資ではなく、これからの投資です。
過去にいくら投じたかではなく、これからどこにお金や時間を使うべきかが重要なのではないかと私は考えます。

生きていれば失敗することなんて誰にでもあります。失敗には確かに大変さや辛さが伴いますが、そこから学んで乗り越えた時の喜びは大きいものです。息子にはいつでも自分自身の意思を大切にできる状態でいてほしいと思っています。

成人した息子に対して、親ができることはそのような環境を作ってあげることくらいなのかもしれません。感情に支配されるのではなく、きちんと合理的に判断して、どのような状況でも前を向いて進んでいく。そうした人生の歩み方が、本当に豊かで実りある人生につながるのではないかと私は考えています。

ゆい工房社長 渡邉陽一

渡邉 陽一

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ゆい工房社長の本音コラム

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